Kyoto Soundscape
「サウンドスケープの技法―音風景とまちづくり」という本に、京都の音を聴く事ができる観光ルートが紹介されています。「京都」と「サウンドスケープ」、なんだか素敵な音が聴けるんじゃないかと思い、仕事の合間をみつけて歩いてきました。
「京都音散歩・まちなか3時間コース」と名付けられたルートは以下の通り。
烏丸御池→烏丸通→新風館→姉小路通→こどもパトナ→麩屋町通→御池通→木屋町通→姉小路通→河原町通→カトリック河原町教会→本能寺境内→民族楽器コイズミ→新京極通→矢田寺→新京極通→錦市場→烏丸通→地下鉄四条駅
スタート地点の烏丸御池に着いたのは朝8時半。ちょうど出勤時で、車と信号の音。自転車の音。携帯で話している人。仙台でもよく見る(聴く)光景だけど、改めて音に注目すると、やはり騒がしい。
烏丸通を歩き、新風館へ。NTTの古い建物を改築して今は商業施設になっているようだ。この中に入って音を聴くつもりが、オープンが午前11時。まだ開いてないので外から眺めるだけ。
古い建物内での音の反響に興味があったのだけど、シチュエーション自体は仙台でも似たようなところがあるので、気を取り直して次へ。
姉小路通は大通りから横道に入った所で、古めのお店がちらほらと見える。車通りもそれほど多くないので、少し静かになった印象。次のスポットのこどもパトナにつくと、意外な音がするものが。
柄杓で水をすくい、石のところに流すと、しばらくすると水滴が共鳴した不思議な音がする。
琴のような音がすることから「水琴窟」と呼ばれるそうだ。
主に日本庭園に置かれる音が出る飾りで、同じようなものに「ししおどし」がある。
小さな音なので耳を澄まして聴いた。たまに通る車の音でかき消されてしまうので、何度も何度も試す。(あとで気づいたのだが、竹筒に耳を当てると増幅されて聞こえるらしい)
小さな水音に意識を集中させると、背景の車の音の音も増幅され、その音の大きさにおどろく。微細な水音をきこうとすると、まちなかの音のうるささにも意識がむけられてしまう。(「サウンドスケープの技法」より)
姉小路通に戻り、通りの音を楽しんでみる。引き戸を開ける音、ほうきで掃く音、車から荷物を降ろす音。何かがスタートする雰囲気に、歩くスピードも少し早くなる。
御池通に出る。とても大きな通りで、交通音もさぞ、、と思ったのだが、最初の烏丸御池よりも気にならない印象。本によるといくつか秘密があるようで、道路に敷き詰められた透水性舗装がタイヤの騒音を抑えているそう。
あとは、道路脇に植えられているケヤキ。目に入る景色の印象を良くする事で、音の印象も改善されるとのこと。また葉っぱ同士が擦れる音(葉擦れ音)が車の音をマスキングする効果もあるそうで、視覚聴覚の両面から、騒音が和らげられているよう。
仙台にもケヤキ通りがあり、最近、ある区間のケヤキが工事のためになくなったのだが、音の印象が変わったと感じた。うるさくなった訳ではないけれど、明らかに騒音の音質が変わったので気になってしまう。
道沿いの幼稚園から、かわいい太鼓の音が聴こえる。おゆうぎかいの練習か。
御池通をどんどん歩くと、中央分離帯に噴水がある。噴水の音も車の音をマスキングする効果があるそうだ。噴水は見た目にもいい。
噴水の音を聴き分けるのにかなり時間がかかった。気づくとすぐなんだけど、、ホワイトノイズのように聴こえた。でもどうしてこの場所にだけに噴水があるのだろう?
大通りから、小さな川のある道へ入る。川の音の変化を聴こうと思ったのだけど、うんと耳を澄ましても聴き取れず。水琴窟のところでもそうだったけど、他の音にかき消されてしまうのがもどかしい。
さらに小道を進むと教会が。近くに商店街があるので騒がしく、教会の中は静かだろうなぁと思いつつ、普段ほとんど教会にいったことがないので躊躇してしまい入らずじまい。
道にプライベートエリアが出来ている。置かれたベンチは、ちょっとした休憩処?小道に求められる役割を示しているようだ。
妙に騒がしい商店街を過ぎて、本能寺境内へ。歴史の重要地点に身震いがする。
門をくぐると石の道がある。なんとなく砂利の方を歩いてみた。ひんやりとした境内は、外の音はあまり気にならない。が、この日は改修工事が行われていて、工事の音が耳についた。奥の方まで歩くと石碑に囲まれたところあり、賽銭箱にお金を入れてみると、周りの石に音が響くのか、何かとても複雑な機械のような音に聴こえた。
大きな木のあるところに戻り、耳を澄ますと、心地よい葉擦れ音が聴こえてきた。しばらく聴いていると、水滴の音に気づいたので振り返ると、大きな瓶から水が落ちていた。立体的なサウンドスケープが静かに流れる。
寺町商店街に出るとすぐ、「民族楽器コイズミ」がある。世界中の民族楽器を販売していて、実際に試したりも出来るそうなので楽しみにしていたのだけれど、まだ開いていなかった・・・意気込んで早く来すぎたのがまずかった。
商店街をさらに進んで「矢田寺」に立ち寄る。
せまい空間に絵馬や仏像、提灯、線香がたくさん並び、奥の本堂には鐘がふたつ。好きに鳴らしても大丈夫そうだったので、小さい方の鐘を鳴らしてお賽銭。短い鐘の音が、せまい空間で鈍く響く。そのうち、地元の方なのか、慣れた感じで入ってきて賽銭箱に入れ、おもむろに大きな鐘を鳴らした。強い鐘の音に囲まれる感じだ。
新京極通を歩く。いままであまり見かけなかった修学旅行生や観光客が歩いてくるので、ガイドなどで紹介されている場所なのかなと推測。まだ早い時間なので、開いている店は少なく、店の前を掃除する音や水撒きの音などが聴こえる。
途中、お寺がいくつかあり、鈴成り輪を回す。チベットのマニ車が元になっているようだ。鈴の音色が参拝者を清める。
途中で右に曲がり「錦市場」に入る。ここは今回の音散歩でもっとも興味深い場所になった。せまい道に、魚、野菜、漬け物、お茶、飾りなど、たくさんの小さな店がたち並ぶ。でも全然うるさくなく、むしろ静かだと感じた。
店にはBGMがない。売るための呼び込みもほとんどない。聴こえてくるのは、道の端にある水路からの水の音。お客さんとのやりとりの声も分かる。気づくと、ときおり「どん」という音がする。魚を捌いたり、お総菜を切り分けたりしているその音は、店頭に並ぶものの新鮮さを表しているようだ。商いのための最低限の音が、心地よく、力強く響く。
…それはおそらく、生音に底力を感じるからだろう。音とともにかおりのうつろいにも心を奪われる。お茶の葉やかつおぶし、おつけものや花卉類。音とかおりから、ふだん意識しない五感のつながりがよみがえる。(「サウンドスケープの技法」より)
2時間強の散歩でしたが、どの場所も特徴的で心地よく、ガイドブックにはない京都を感じることができるような気がします。今回の音散歩で強く思ったことは、やはり実際に行って体験するのがベストだということ。もちろんサウンドスケープのCD等はいろいろあって、予習にはいいのかもしれませんが、五感のすべてに刺激を受けながら、探したり気づいたり楽しんだりする魅力には代え難いものがあると感じています。